このストーリーは、昨年ブログとして公開したものをベースに、リメークしました。
製造現場の管理・監督者として、自分のあるべき姿はなんだろうか?
と考えた事はありますか。
日々の出来事に振り回される毎日を、忙しいながらも漫然と送っていませんか。
もし、あなたがそんな状況なら、少し立ち止まって自分のあるべき姿を考えてみませんか。
岡本厚夫(仮称)は、検査課の工長として日常業務に追われ、目まぐるしくいろいろな業務を処理するのが精一杯の毎日。岡本工長の直属の部下は第1組浅野組長と第2組鷲尾組長の二人、各組長には15人の組員がいるので、岡本工長の第一係は総勢33名で構成されている。
「それにしてもなぜ毎日色々なトラブルが起こるのだろう?」
「工長になって3年目を迎えるが、自分のペースで仕事が進まない。」
「この忙しい状況をなんとかしなければ、長期的な課題のカイゼンに手がつけられない。」
と岡本工長は独り言をいうのだった。
昨日も午後16時になって製造で品質不良が発生。昼勤の浅野組長と原因究明などを検討したが、すぐに原因が特定できなかった。
夜勤の時間になって鷲尾組長にも加わってもらったところで、メーカー部品の不具合であるところまでは特定できた。
夜遅くまで検討して、あとは明日検査課のスタッフに引き継ぐと言うことにして、やっと帰宅できた。
「なんとかしないとこのまま何年もこんな毎日を送らなければならなくなってしまう。」とまた今晩も夜寝る前に同じことを考えていた。
翌日になって、岡本工長はこのような状況を打開すべく、思い余って上司の吉川課長に相談を持ちかけた。
吉川課長はしばらく腕を組んで考えていたが、
「岡本くん、製造課で”監督者マネジメント改善”と言う活動が始まったのを知ってる?」
このような時に、早速検査課でも、監督者マネジメント改善活動が始まった。
本社の指導員の指導のもとに進めることになった。第一回目の指導会では、いきなり右のような図を説明されて、正直面を喰らったが、これが理想の状態であることを説明してくれたのだった。
よく考えてみると、自分は工長と言う立場でいながら、2ランク下のリーダーのように、部下の世話はかろうじてしているものの、目の前の不具合対等に追われて、現場管理など考えてもいなかった。
まして、組長業務の現場監督が満足にできていれば、自分が毎晩苦しむ事もなかったと言うことが理解できた。
現時点で、ワンランク上など考えることはできないが、当面は「現場管理」を地道にやるところから始めていこうと決心した。
あるべき姿と当面の目指す姿は以前から考えていたこととほぼ同じだった。
しかし、こうやって整理してみると改めて、現状の世界とのギャップを感じた。
TQMでは、あるべき姿と現状のギャップを課題と言う事も学習した。
組長の役割
①「日々の生産活動を着実に遂行する維持改善活動」
②「標準作業を遵守できる環境作り」
「日々の生産活動を着実に遂行する維持改善活動」ということは、頭ではわかっているが、目の前の不具合を解決するだけで、維持改善活動にはなっていない。
「標準作業を遵守できる環境作り」ということについても、作業標準書はできていても、若手の人が標準作業の目的を本当に理解していないのではないか、という問題意識を日頃感じていた。
そうは言っても現状の業務に押しつぶされている状態からどうやって抜け出すことができるのか?
指導員は「カイゼンの定石から、次は現状を見える化することから取り掛かるとしよう。」と言った。
組長の現状も同じように「業務構成表」を使って見える化してみた。
すると、どちらが工長で、どちらが組長なのか判別できないような業務構成表が出来上がった。二人で一緒に動いている時間がかなり多いことが気になった。
現場の改善でも現状のありのままの姿を、「標準作業組合表」や「ものと情報の流れ図」などを使って見える化することを「表取り」あるいは、表準(オモテヒョウジュン)と呼ぶ。
次に浅野組長の1日を表準に落とし込んでみた。
まず、稼働前と稼働後に多くの仕事をしていることがわかる。それにしても資料の授受の多いことが目に付く。
さらに資料の授受などに関して、情報(紙などの媒体)のやりとりを見える化するとたくさんの無駄が見えてきた。
情報に変化を与えていないプロセス=付加価値を産まない=ムダという、TPSの基本的な考え方でムダを除去して行った。
その結果、18時間/月かかっていた業務が4時間/月で切るようになった。
これはカイゼンの事例としてはほんの一例ではある。
工長も組長も現場のカイゼンのプロなので、マネジメントの改善の方法を理解すれば、その後は一つ一つ改善を進めていくだけである。
工長の使命は下記の通り明確になった。
仕組みの作成・改善
組長の人材育成
部・課間を横断する課題の改善
検討の結果、187時間のうちの37%が工長の使命に該当する業務であったが、63%は工長がやるべき業務でなかったことが判明した。
63%の工長がやるべきではない業務とは、恥ずかしいことだが自分にとっては得意なことで、部下にやらせるより自分がやったほうが良いと思ってやっていた。
ただ慣れているからといって、自分がやっていたら部下の人材育成どころではない、ということにも気がついた。
組長についても工長との重複はあったが、業務ごとの目的を明確にした上で、無駄を徹底的に排除した。
その結果、定型的な業務は45%で、残りの55%を人材育成と標準作業の一層の充実に充てることができるようになった。
若手の作業者へ標準作業に則って仕事をすることで、
品質は確保できる
もし問題が起きても、原因の特定がしやすい
などのことを繰り返し朝のミーティングで訴えかけたことで、若い人たちにも考えが浸透し、最近では、若手作業者からの提案が増えてきて、標準作業が日々改定できている。
一番良かったことは、部下が標準作業通りに仕事をしてくれるので、自分が問題を考える時間が増えたことだ。自分が楽になって、良い仕事ができるようになった。
まとめ
今回の改善では、管理監督者の役割・使命を明確にして、やるべきことを整理することで真の問題(ムダ)が見えてくることがわかった。
現場のマネジメントは標準作業を確立することで、工程が自律的に動けるようになり、組長が日常に追われることなく、監督できるようになる。
標準作業の重要性を認識した上で、さらに改善していくこと(仕組みを維持・発展させる)が、工長の役割として重要。
工長も組長もお客様にとって付加価値の高い業務にウエイトを置いて、より良い高品質な製品づくりに専念する。
あるべき姿をもっと高いところに置くと、皆さん自身と皆さんの周りの環境が大きく変化します。
あなたの頭にかかっていたロックが外れるのです。
コーチングでは、スコトーマが外れると言いますが、この状態になると、今まで意識に上がってこなかったあなたにとって新しい情報がどんどん意識に上がってきます。
会社の仕事だけでなく、生活全般を変えることができるのです。
ぜひやってみてください。
やり方がわからなかったら、お手伝いしますよ。
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