「意識の研究」(スタニスラス・ドゥアンヌ)を学ぶことは、コーチング理論の理解をさらに深めることができます。
「無意識の書き替え」などにおいて、独自の味をつけていきたいと勉強しています。
この一連のブログ投稿は私の学習ノートです。今回は、無意識、意識に続くテーマ
「意識のしるし」を書いていきます。
意識的な状態になるには、ワークスペースのニューロンの一部が数百ミリ秒間安定して活性化することでコード化されます。(グローバル・ニューロナル・ワークスペース理論)
私たちは、モナ・リザという一つのイメージを、「身体から分離した手」、「微笑み」、「空間を漂う目」などの感覚情報や、他のさまざまな情報(名前、意味、ダ・ヴィンチの天才についての知識など)を、統合してモナリザという全体のイメージを理解しています。
多くの脳領域に分散するこれらのニューロンは、一つの統合イメージのさまざまな側面をコード化して、保持しています。
コンシャスアクセスが続くあいだ、ワークスペースのニューロンは、その長い軸索を利用して情報を交換し合い、同期しながら大規模な並行処理を実行します。
そしてそれらが一つに収斂するとき、意識的知覚が完成するのです。
その際、意識の内容をコード化する細胞集成体は脳全体に広がり、
個々の脳領域によって保持される情報の断片は、全体として一貫性があります。
関連するすべてのニューロン間で、軸索を介してトップダウンに同期されたイメージがが保たれているので、一貫性を保つことができるのです。
この仕組みでは、ニューロンの同期が鍵になります。
互いに遠く離れたニューロンが、背景で継続する電気的振動に各自のスパイクを同期させて
巨大な集合を形成する現象が捉えられています。
私たちの思考のそれぞれをコード化する脳のウェブは、ニューロンの集団が示すパターンに従って、個体同士が光の明滅を調和させています。
たとえば左側側頭葉の言語ネットワークの内部で、単語の意味を無意識にコード化することがりますが、無意識な状態ではありますが、限られた領域の間では、同期している可能性はあります。
しかしその情報は、前頭前皮質がアクセスしないため、広く共有されず、意識に上がらずに無意識のうちに留まります。
皮質には160億のニューロンが存在し、各ニューロンはごく限られた範囲の刺激に特化しています。
視覚皮質だけを取り上げても、顔、手、物体、遠近、形状、直線、曲線、色、奥行きなどに対応するさまざまなニューロンが存在します。
各細胞は、視覚的場面に関わるわずかな情報を伝えるにすぎません。
このわずかな情報のなかから、一つの思考の対象が、意識の焦点として選択されます。
その際、関連するすべてのニューロンは、前頭前皮質にある一部のニューロンを通して、
部分的に同期しながら活性化します。
発火していないニューロンも情報のコード化に関わっています。
沈黙することによって、現在意識している対象とは無関係であることを、他のニューロンに暗黙的に伝えています。
このように意識の内容は、活性化したニューロンと、沈黙するニューロンの双方によって定義されています。
意識的知覚が生じているあいだは、ワークスペースのニューロンの一部が活性化し、残りが抑制されることで、その瞬間の思考の内容が定義されます。
活性化したニューロンは、その長い軸索を通じてスパイクを送り出すことで、皮質全体にメッセージを一斉伝達します。
これらの信号は、刺激を受けると活動電位の発生を抑制するニューロンまで到達します。
すると、それらはサイレンサーとして機能し、一群のニューロン全体を黙らせるように働きます。「黙っていろ。おまえたちは、いまは必要ない」というわけです。こうやって意識的思考は、活性化して同期したニューロンから成る小区画と、抑制されて沈黙した細胞から成る巨大な区画によってコード化されているのです。
活性化した細胞では、シナプス電流が表層の樹状突起から細胞体へと伝わって行きます。これらのニューロンはすべて並行して走っているため、電流は累積され、頭部の表面では、意識された刺激をコード化する領域全体にわたって陰性の遅い脳波を産みます。
しかし抑制されたニューロンがその場を支配し、その活動によって陽性の電位が形成されます。
活性化したニューロンより、抑制されたニューロンのほうがはるかに多いため、この陽性の電位は、やがて大規模な脳波を形作ります。
これが、意識の第二のしるしたるP3波の実体であり、それはコンシャスアクセスが生じる際にはいつでも容易に検出できます。このようにグローバル・ニューロナル・ワークスペース理論は、P3波がこのように強く、また包括的で、再生可能である理由を説明することができます。
意識を定義するのは、拡散する陽性電位ではなく、焦点が絞られた陰性電位です。
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