仕事=課題解決の要諦は、人とプロセスです。
課題解決の手順がしっかりと確立されていて、そのプロセスを運営するに十分な人の能力が大きくものを言います。
以前にご紹介した、ある組織での製品開発の成功事例は、試行錯誤で進めた部分もありますが、結果的に大きな成果を上げています。
技術者として、「良い製品を創りたい」と言う熱い「エンジニアの気概」が、コレクティブエフィカシーとなって、大きな力を生みました。
以前もお伝えした通り、お客様は、「この製品なら、この値段を払っても良いかな」と言う金額で、契約のご決断をされます。
それが、「お客様が買ってくれる値段」です。
関係者は、会社として存続するために必要な利益を差し引いた金額で、お客様の満足して頂ける製品を作ることが、この組織の使命であるということに気がつきました。
つまり、「原価」=「売価」ー「利益」の考え方で、目標設定をすることです。
製品開発では、「お客様が買ってくれる値段」で、製品を設計していく必要があるのです。
これを原価企画目標と言います。
目標金額は部位ごとにブレークダウンされて、各担当者のターゲットが明確に決まっていきます。
関係者の皆さんは、原価企画目標を「お客様の要望」だと理解しました。
各エンジニアは、抽象度を高めてみることで、原価企画目標の達成と顧客満足が、同一であることを理解しました。
自分達のやるべきことが腹に落ち落ちたと言うことです。
それから製品開発活動は、急ピッチで、加速していきました。
メンバーは、今まで自分達には不可能だと思われる技術にも、積極的に挑戦してみようという気持ちになっていたのです。
大幅な構造変更案が、若手の技術者から積極的に提案されました。
彼は、以前からこの案を自分の中で温めていたようです。
この経緯は、前の記事でもご紹介いたしましたが、メンバーの意思が一つになって、次々と斬新なアイデアが湧き出してきました。
原価企画目標は見事に達成できて、今回開発した新機構もお客様から好評を得ています。
さて、今回の活動は大きな成果を生みました。
今後はこの成功事例を、どうやって未来に活かしていくかということを考える時がきました。
今回は仮のスケジュールを立てて進んできましたが、全体的には、お客さまへは計画通りに、納品できました。
次の製品開発の時に、リードタイムを短縮する必要があれば、それに取り組む必要もありますが、今のところはそこまでの必要はなさそうです。
しかし、今回の活動では仮のスケジュールに対して、活動の実績がどうだったのかという記録を確実に残しています。
仮の計画通りにはいかなかったプロセスがあったり、活動中に追加した取り組みもありました。
でも、今回は記録を残していますので、活動を振り返ることができます。
PDCAを回すための計画の情報があります。
この物差しに実績の記録を当ててみると、差が見えてきて、その要因分析の材料が手もとにあるのです。
今回やってきたことで、良かったことと改善点を分析することで、次に繋げることができるのです。
例えば、「アイデア出しのプロセスで、若手から積極的な提案を引き出した。」
⇦どうしてこれができたのでしょう。
「顧客満足」を全員で共有できた。⇦それはなぜできたのか?
アイデア出しの検討会を全員で真剣に行うことができた。⇦それはなぜできたのか?
検討会の後にも、引き続き貴重なアイデアが続々提案された。⇦それはなぜか?
改善点の指摘、いわゆる反省は、よく出てきますが、肝心な成功要因は、なぜかメンバーの無意識の中に眠ってしまうものです。
今回の成功事例をもとにプロセスを整備するところまでは、どの組織でもやります。
でも、「これをやった」と言う記録を残しておくことで終わってしまうことが普通です。
成功要因をさらに深掘りして、そのノウハウを自らの仕事のやり方にして残しておき、毎回継続的にカイゼンしていく。
ここまでやれたら本物です。
そのノウハウは、この組織の価値ある資産となります。
バランスシートに記載されない、価値ある資産。
誰にも真似のできないノウハウが、この組織内に受け継がれていきます。
このノウハウの詰まったプロセスと、メンバーの知恵がうまく噛み合うことで、素晴らしいパフォーマンスが生まれます。
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