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執筆者の写真Hatsuo Yamada

カメさんチームの目覚ましいフットワーク

ご記憶の方もいらっしゃるのではないでしょうか。


今回は、カメさんチームの更なる成長についてお話ししたいと思います。


トヨタ生産方式の生みの親とも言われる、大野耐一元副社長の有名な言葉に、

「困らんやつほど困った奴はおらん」という言葉があります。


実は、カメさんチームは、カイゼン活動を始める前は、あまり無理をしなくても、ある意味うまくいっていたようです。


うさぎさんのような強力なライバルがいなかったようなのです。


初めてのカイゼン活動では、資材メーカーさんが「納期を守ってくれない」と言う不満を取り上げて、直接メーカーさんを訪問して、お互いの問題点を共有することで、メーカーさんとWin-Win の関係を構築することに成功しました。


資材メーカーさんが「納期を守ってくれない」と言う不満は、最初のうちは自覚症状はあまりなかったようです。


先の開発で起きた記録をできるだけ詳細に、時系列に出来事を並べてもらいました。


こちら側とメーカーさんの行動を時間を追って見てみると、備品の遅延の原因が、こちら側にもあったと言うことがわかってきました。


「納期を守ってくれない」という不満だけがアタマを占領していて、自分達の不満しか見えていませんでしたが、自分達のせいで、相手が困っていることが見えてきました。


この後、メーカーさんと腹を割って話をすることができて、お互いの改善点が見つかりました。


「わたしたちの問題を無くしますので、もう一度協力してください」という気持ちで、メーカーさんと話をすることができましたので、お互いにやるべきことが見えてきました。


私は、彼らの秘めた能力を信じていました。


そこで、第2弾の活動は、製品のフルモデルチェンジをゴールとしてもらいました。


設計者が製造に、「日頃やりにくいと感じていることを提案してもらいました。」


すると、たくさんのアイデアが湧き出てきました。


設計部署では、それらのアイデアをできる限り図面に落とし込んでいきました。


気がついてみると、高すぎて手が届かないと感じていた目標が、もう手が届くところまで近づいていました。


カメさんチームはこのカイゼンで、設計+製造+検査の力の相乗効果を活かして、当初は困難だと思っていた目標を達成することができました。


コーチング用語で、ゴールを達成するための自己評価をエフィカシーと言います。

この活動の場合は、個人ではなく集団ですから、コレクティブエフィカシーと言います。


第一弾の活動では、メーカーさんとのWin-Winの関係構築。

第2弾の活動では、設計+製造+検査のコレクティブエフィカシーが高まりました。




そして、今回のカイゼン活動のお話です。

今回はグローバルに資材の価格が高騰して、世界中で厳しい調達環境に陥っています。


カメさんチームも例外ではありませんでした。


通常の活動ですと、中期的にコストダウンをしていく計画があって、その計画に沿って2年後にコストダウンを行う計画でした。


しかし、この調達環境の悪化を速やかに問題と捉えて、コストダウン計画を1年前出しする決断をしました。


コストダウンの目標は、社内の関係部署と相談して、厳しい目標を設定しました。


カイゼン活動を始める前ですと、コストダウンは設計だけが行うことになっていましたが、第2弾の経験を活かして、当然のように製造+検査も始めから、チームに加わりました。


彼らは、それぞれが達成すべき目標金額を設定して、第2弾の活動で身につけた手法を使い、スピード感を持って活動を開始しました。


製造では、第2弾と同じように、「どうしたら作りやすい構造になるか」という視点で、提案を洗い出しました。


この過程で、彼らは生産技術を巻き込んで、生産設備を作る視点も入れて、複数の視点から、たくさんのカイゼン提案を洗い出しました。


目標を決めてから、提案の洗い出しまでのスピードは目を見張るものがありました。提案が泉のように噴き出してくるような感覚です。


検査も同様です。

検査をしなくて済む方法を迅速に洗い出しました。


設計は、製品の原価構成を見える化してみると、筐体にコストがかかっていることに気がつきました。


しかし設計は、筐体の構造をシンプルにして、材料を少なくして、作りやすくするというアイデアを考えついたのですが、残念ながら設計には、筐体の価格が相場に対して高いのか安いのかという判断基準がありませんでした。


メーカーさんと交渉する術がなかったのです。


そこで、社内で筐体を作っている部署に相談をしてみました。


「社内で作ったら、いくらでできますか?」


この問いかけに応じて、時を置かずに社内の筐体製造部署から力強い回答をもらいました。


この結果、現在のメーカーさんの価格に比べると、加工費の比較で、かなり安くできそうだということがわかりました。


この情報に力を得た設計チームのリーダーは、上司に相談して、資材部の力を借りて、他の筐体メーカーさんからの情報を収集してみることにしました。


社内の他の事業部でも、外注メーカーさんに筐体を依頼していますので、リーズナブルな価格を探ることができます。


そして、従来から一緒に活動をしていた部内のチームに加えて、資材部も仲間に引き込んで、数社に見積もりを依頼することになりました。


その後の感触では、現行品と比較して大幅な原価低減の可能性が出てきました。


今回の活動も、最初の3ヶ月で大幅な目標達成が視野に入っています。


この第3弾の活動の成功要因も、第2弾と同じくコレクティブエフィカシーを醸成したことが挙げられます。


第2弾の時点より、仲間をさらに広げていったことが大きな成功を産みました。


カイゼン活動のリーダーは、社内の関係部署の力をうまく使って、大きな効果につなげていく醍醐味を味わっています。


カイゼンは、一人でやるものではありません。



カメさんチームの動きは、活動を重ねて行くにつれて、どんどんスピード感が増していきます。




もう「カメ」のイメージは過去のものです。





認知科学の観点で見てみましょう。


「困らんやつほど困った奴はおらん」と言われてしまいそうなほど、課題意識の低かった人たちでした。


そのころは、「メーカーさんが納期を守ってくれないことに少し不満を感じていますが、えー、現在は特に大きな問題ではありません。」という意識でした。


つまり、このような意識の状態が、当時のコンフォートゾーンだったのです。


  1. 第1弾、2弾とカイゼン活動を進めて行くうちに、 彼らには「未来のあるべき姿=ゴール」が明確に見えてきました この時点で、「困らんやつ」はもうとっくに卒業していました。

  2. スコトーマで覆われた「未来のあるべき姿=ゴール」が明確に見えてきたということは、 スコトーマが外れ、コンフォートゾーンが誤売る側に移動したことを意味します。

  3. スコトーマが外れたことによって、ゴールの達成方法が次々と見つかっていき、何の躊躇いもなく一つ一つ実践していきました。

  4. また、「未来のあるべき姿=ゴール」を関係者で共有することができたことで、「ゴール」達成に向けたコレクティブエフィカシーが醸成されました。

  5. 面白いように、次々と協力者が目の前に現れてきました

*スコトーマとは、心理的盲点を指します。


私は、こんなにフットワークの良いカメさんには、お目にかかったことはありません。😁


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