カイゼンを始めるときに、現状に執着したままでは、小手先のカイゼンくらいで終わってしまいます。
それは改善とは違います。「何か少し変えた」くらいで満足してしまいます。
「カイゼンって、材料をケチって安くすることでしょ!」
と、堂々と私に言い放った人がいました。昨年初めて知り合いになった人です。
ここまで知識の乏しい人には、生まれて初めて出会いました。
正直言って、「可哀そうな人だな」と思いました。
この方の例は、全く極端な例ですが、
カイゼンテーマを前にして、「改善なんかやりたくない」という方にはよく出会います。
「今のままで良いじゃん。」
「今の仕事を前任者から受け継いで、言われて通りやっているし、何か問題あるの?」
こうやって言葉で伝えてくれる方は良いのですが、大抵の方は、心で思っているだけです。
それでも、その気持ちは非言語でヒシヒシと、私に伝わってきます。
認知科学コーチングで、説明がつきます。
トヨタ式カイゼンでも、経験的に、「誰にでも変えることに対する、抵抗感があるものだ」と理解しています。
トヨタ式では、「まず現状否定から始める」と言いますが、誰にでもあるこの抵抗感を取り除かないと、カイゼンが始まらないことがわかっているからです。
誰にでも「コンフォートゾーン」というものがあります。
人間が快適に生活できる外部環境にはある程度の幅があり、その幅のことを「コンフォートゾーン」と呼びます。
抵抗感の話の直後に「コンフォートゾーン」の説明を入れてしまいましたので、「コンフォートゾーン」は、”悪いもの”という印象を持たれてしまうかもしれませんが、まだ、”悪いもの”と決めつけないでください。
サッカーでは、ゲームの開催地について、”ホームとアウエイ”と分けて、ホームでのゲームでは、選手はリラックスして良いパフォーマンスを上げると言います。
「コンフォートゾーン」とは、「ホーム」のことです。
人間が快適に生活できる外部環境、つまり、居心地の良い環境のことです。
仕事にも「コンフォートゾーン」は当てはまります。
自分が気に入っていて、長年やっている得意な仕事は、まさにこの「コンフォートゾーン」のど真ん中にある仕事なのです。
人は、口では「変わりたい」「現状のままではいけない!」と本人は意識で思っていても、すでに無意識の中にできあがってしまった「コンフォートゾーン」から外れないように、自分自身の思考や行動を、勝手に制限してしまう脳のはたらきがあるのです。
有名な”茹で蛙”の寓話のように、
本人は自分の心地よいところから抜け出したくなくなっているのです。
「コンフォートゾーン」は、現状です。
ここから抜け出すことができないと、ずーと現状維持の状態が続きます。
トヨタ式では、「コンフォートゾーン」という言葉すら使っていませんが、「人は現状から抜け出したくないものだ」という経験上の知見により、「現状否定」からスタートします。
そして、目線を上げて、現状より高いところを目指して、「あるべき姿」を明確に意識していきます。
この目線を上げるサポートをするのは、上司や先輩の役割です。
その上司や先輩にあたる人たちも、その昔同じような経験をして、「現状否定」の重要性を理解し、常に高い視点から、あるべき姿を考え続けています。
彼らは、いろいろなやり方で、担当者に「現状否定」を促します。
「君のあるべき姿は〇〇だ!」と初めから指示してしまうことは、普通はやりません。
この事例はワーストプラクティスです。😎
ヒントを与えて、自らが「あるべき姿」を見つけるのを手伝います。
ビジョンやミッションを含めた上位方針や、今起こっている、取り巻く環境の変化などは、ヒントとしては、効果的です。
見つけるのを手伝うだけでなく、「あるべき姿」にたどり着くまで、自分のことのようにサポートします。よっぽどのことがない限りは、手を出しません。
担当者は自ら気がつくことで、納得性が高まります。腹落ちできるのです。
認知科学コーチングもほとんどこれと同じです。
「コンフォートゾーン」という現状から抜け出すには、ゴールを現状の外に設定します。
クライアントが、すぐに現状の外へ出ることはなかなか困難なことです。
「コンフォートゾーン」の中からは、「コンフォートゾーン」の境界線は自分では意識しにくいものです。
たとえ「コンフォートゾーン」の存在をはっきり意識できたとしても、「コンフォートゾーン」から逃れることは、自分ひとりでやろうとすると、ものすごく大きなエネルギーが必要になります。コーチの助けを借りる方が、早いし、効果的です。
たとえば、現状から抜け出したくないと思っている人は、無意識に、とてもクリエイティブな言い訳を考えついて、現状から抜け出すことを回避しようとします。これをクリエイティブ・アボイダンスと言います。
クリエイティブ・アボイダンス、あなたも心当たりはありませんか?
コーチは、客観的に「コンフォートゾーン」を見つけ、それをダイレクトな言語を使わずに、クライアントに気づいてもらうように働きかけます。
そして、ゴールが明確になると、無意識が働き始めます。
今まで脳に入ってこなかったゴール達成に関する情報が、自然に飛び込んできます。
改善も同じで、「あるべき姿」が明確になると、どうしたらそこに辿り着けるかを考え始めます。現状と「あるべき姿」の間を分析すると、いろいろなやるべきことが見えてきます。
まず、自分には「コンフォートゾーン」があるということを、受け入れてみてください。
そして、もっと自分が心からやりたいことを考えてみてください。
もしそれが自分で見つかれば、あなたの「コンフォートゾーン」は早々にゴールの近くに移動します。
あなたはすぐに、現状には居たたまれなくなってきます。
そうなれば、ゴールは未来からあなたに近づいてきます。
過去は関係ありません。
もし、一人で見つからない場合は、コーチに相談すれば、
必ずあなたの未来はひらけてきます。
コーチは、「コンフォートゾーン」を見つけて、
ゴールを設定するお手伝いだけでなく、
ゴールの達成に向けた、あなたの脳の使い方を知っています。
先週のこの記事
も参考にしてみてください。
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